先日、私にとって、とても大きな気づきがありました。それは仕事において、「お客様に喜んでもらうために努力すべきだ」ということです。言葉だけ聞けば、いろんなところで耳にするような極めて当たり前のことかもしれません。私自身も何度も耳にしたことはありますが、それはただの知識として頭に入れていただけでした。
私はもともと、お客様に喜んでもらうことよりも、チームの人や社内の人、社外の友人など、周囲の人たちに褒められたり認められたりすることに喜びを感じるタイプでした。そのために結果を出したいと思ってきました。だから「お客様に喜んでもらうために」と話す人たちのことを、マザーテレサのような人だな、すごいな、私にはできないな、とどこか遠巻きに見ていたような気がします。
それでも私は私なりにこれまで頑張ってきました。頑張っていれば、必ずいい方向にいって、結果がついてくると思っていました。しかし「こんなにがんばってるのにお客様が全然喜びを感じてくれていない、がんばったなと思うお客様に限ってクレームになる」というような経験がいくつかありました。とてもストレスが溜まりました。
どうして私のお客様は喜んでくれないんだろうと考えました。考えて、考えて、辿り着いた答えが「お客様に喜んでもらうために頑張っているのではないから」でした。今までの私は、極端な例を言うと、風邪を引いてものすごく体調の悪い中、夜中までがんばってなんとか重説つくったのに、お客様に感謝されない、という感覚でした。そんなことはお客様にとっては関係ないのに、私はそんな自己満足のがんばりで満足してしまっていました。ただ努力するだけでは意味がない。正しい努力ができて初めてお客様は喜ぶし、結果も出る。そして周りの人も褒めてくれる。答えはとてもシンプルでした。こんな簡単なことにようやく気づきました。
「お客様に喜んでもらうためにがんばればいいんだ」と真に落とし込めてからは、とても気持ちが楽になりました。
お客様から要望が来て、飛び込み仕事が入ったとき、なんでこんなことを言ってくるんだとすごく嫌な気持ちになっていたのが、「心配されてるんだな、安心させてあげないと」と素直に受け入れられるようになりました。がんばるべき方向がはっきりと見え、その方向に進んでいけば大丈夫なのだと今は確信しています。働き方のスタンスが大きく変わる、私にとって衝撃的な気づきでした。
◆プロフェッショナル vol.2 『仕事にプライドをもつプロフェッショナル』 その1
2006年4月、新人研修を終え、宅地開発チームに配属されたH氏。
それから5年5ヵ月。
納会やスピーチなど、ことあるごとにH氏は語り続けた。
「自分の力で土地を仕入れたい」。
リーマンショックで仕入れ業務がストップしたときも、涙を流し語っていた。その執着心はどこからきていたのか?
「仕入れは、僕が社会人になって初めて任された仕事。でも、僕はまだその面白さもやりがいも達成感も知らない。それを知らずして、他の仕事にはいけないんですよ」。
彼を絶えず動かしていたのは責任感とプライドだった。
そんなH氏が今回のプロジェクトの舞台となる地に出会ったのは、今年4月。業者から送られてきた情報が目に留まった。
「いける!」 瞬時に直感が働いた。
造成済みの完成宅地(年内引き渡しが可能)。駅近で3500万円以下。利便性の高い環境。好条件が揃ったこのエリアに残された唯一の土地。
同じタウン内には大手ハウスメーカーなど競合他社が集っていたが、H氏にとってハードルではなかった。
「我々の企画力を持ってすれば、大手のブランド力には絶対に負けない」。
それは確信に近かった。
関係者に意見を聞き、検討を重ねた。
最終的に「過去に携わった条件の似たエリアでのノウハウを活かせばいける!」という考えが決め手となり、契約に至った。
「嬉しかったけど、達成感はなかったですね。たとえば、仕入れ部門、販売部門と完全に分業化されている会社であればそれで任務完了になるのかもしれない。でも、我々の仕事は違う。契約時は 『あぁ、やっと始められる』という思いでした」。
土地の仕入れから企画、販売、引き渡し、そしてアフターにまで携わり、更にはお客様の喜ぶ顔まで見ることができる。
そういう意味で、今はまだ通過点に過ぎない。
チームが掲げる「年内完売」を達成した時、H氏はようやく一つの達成感を得られるのかもしれない。
⇒続く