◆プロフェッショナル vol.2 『仕事にプライドをもつプロフェッショナル』 その2

土地の契約がまとまったのが7月末。年内完売を実現するには一刻も早く販売を開始する必要があった。
ただ、引き渡しは早くとも8月18日。
協議の結果、販売開始は決済の翌々日という前代未聞の強行スケジュールとなった。
通常、販売準備には3ヵ月から半年程度を要するが、今回は、実質3週間しかない。
広告チームが準備に入った時点では、コンセプト、企画、価格、何も決まっていなかった。
「メチャクチャやと思いましたよ。でも、H氏をはじめ関係者全員の本気の姿を見ていると、もうやるしかありませんでした」とK先輩。
広告チームの仕事は、販売センターのコーディネートからサインの設置、チラシやパンフレット、HPの制作などの集客業務、細かい営業ツールの作成にまで至る。
更に、今回の販売準備はこれまでと大きく異なる点があった。それは、一連の動きの中に社長が一切入らないということ。これまでは社長が陣頭指揮をとっていた。
しかし、今回は各部門への権限移譲を図るという目的で社長はあえて入らなかった。

「最初は不安でしたけど、バラバラになることはありませんでした。気付いたら、全員が指示待ちじゃなく自発的に動いていました」というのは広告チームの一メンバーYの言葉。
もちろん、連携をとる中で考えや主張がぶつかり、意思疎通が図れないこともあった。
それでも準備は止まることなく進んだ。8月20日にはチラシが折り込まれ、販売センターがオープンした。
「『何としても間に合わせる』というのは全員一致の思い。ぶつかっても根本では繋がっていることをどこかで感じていました」。
各部門が連携をとるためには絶対的な信頼関係が必要だ。
一度決めたら思いを共にして、同じ方向に走れる仲間、「絶対にやってくれる」という信頼を互いに持てる仲間がいたからこそ、成し遂げられたことかもしれない。

⇒続く

◆プロフェッショナル vol.2 『仕事にプライドをもつプロフェッショナル』 その1

2006年4月、新人研修を終え、宅地開発チームに配属されたH氏。
それから5年5ヵ月。
納会やスピーチなど、ことあるごとにH氏は語り続けた。
「自分の力で土地を仕入れたい」。
リーマンショックで仕入れ業務がストップしたときも、涙を流し語っていた。その執着心はどこからきていたのか?
「仕入れは、僕が社会人になって初めて任された仕事。でも、僕はまだその面白さもやりがいも達成感も知らない。それを知らずして、他の仕事にはいけないんですよ」。
彼を絶えず動かしていたのは責任感とプライドだった。

そんなH氏が今回のプロジェクトの舞台となる地に出会ったのは、今年4月。業者から送られてきた情報が目に留まった。
「いける!」 瞬時に直感が働いた。
造成済みの完成宅地(年内引き渡しが可能)。駅近で3500万円以下。利便性の高い環境。好条件が揃ったこのエリアに残された唯一の土地。
同じタウン内には大手ハウスメーカーなど競合他社が集っていたが、H氏にとってハードルではなかった。
「我々の企画力を持ってすれば、大手のブランド力には絶対に負けない」。
それは確信に近かった。
関係者に意見を聞き、検討を重ねた。
最終的に「過去に携わった条件の似たエリアでのノウハウを活かせばいける!」という考えが決め手となり、契約に至った。
「嬉しかったけど、達成感はなかったですね。たとえば、仕入れ部門、販売部門と完全に分業化されている会社であればそれで任務完了になるのかもしれない。でも、我々の仕事は違う。契約時は 『あぁ、やっと始められる』という思いでした」。
土地の仕入れから企画、販売、引き渡し、そしてアフターにまで携わり、更にはお客様の喜ぶ顔まで見ることができる。
そういう意味で、今はまだ通過点に過ぎない。
チームが掲げる「年内完売」を達成した時、H氏はようやく一つの達成感を得られるのかもしれない。

⇒続く