◆プロフェッショナル vol.9 『成長するプロフェッショナル』

27年間、ただの一度も表彰されることなく生きてきた。中学・高校の部活でも、受賞して称えられたことはない。クラスの人気者でもなく、女子にモテることもない学生時代。自分の人生なのに真ん中を歩いていないような感覚。負け越したままで人生を終えたくない。主人公になりたい。そんな思いを持ち、勝負ができる環境を求めてこの会社を選んだ。
新人の頃は、持ち前の真面目さでコツコツ頑張り、研修では上位にランクイン。意気込んでスタートした1年目だったが、実践ではまったく通用しなかった。いくら真面目でも、それですぐに結果が出せるほど甘い世界ではなかった。
2年目の異動で、同期と同じチームになった。仕事は相変わらずで、お客様の気持ちがわからない上、上司の指示もうまく受け取れない。毎日叱られる僕の傍らで、隣の同期は着々と数字をあげていた。「努力で成果をあげるアイツ」と「真面目にやっているはずなのに成果のあがらない自分」。大きな差を突きつけられ、劣等感に苛まれた。
そんな中、仕事で大きなミスを犯した。上司から「起こしてしまったミスがどうこうではなく、もっと根本のお前の性質に起因しているということに目を向けろ」と強い語気で言われた。そこでようやく気付いた。「自分は人に嫌われるのを恐れてコミュニケーションを避け、己の狭い視野のなかでしか活きていない。この根本を変えなければ、これまで通りの人生は続く」と。何より僕は、漫画みたいな劇的な展開をただ待っているだけで、結局自らは何も変えようとしていなかった。変わるきっかけは、これまでにいくつもあったはずだ。ただ、狭い世界観で生きる自分はそれに気付けなかった、お客様をはじめ多くの人に迷惑をかけたこの出来事を、ずっと待っていた”青天の霹靂”にしようと誓ったのだった。
それから2年経ったとある年の第3四半期。最終日の夜中に実績表が更新され、四半期での一位が確定した。チームメンバーみんなで喜んだその瞬間。僕の人生にはじめてスポットライトが当たったような気がした。
負け続けた二十数年越しのリベンジをやっと果たすことができ、人生初の一位を獲りホッとする一方で、まだ満足いかない自分もいる。もしかしたら満足する日なんて来ないのかもしれないが、いつか僕が真に「主人公になれた」と思えるその日まで、懲りずに勝負を続けていこうと思う。